建学の精神
平成5(1993)年、東京・代々木において、小さな「オルタナティブスクール」が産声をあげました。当時、不登校だった子どもたちは、世間の無理解や誹謗中傷にさらされ、行き場もなく、居場所もない状態でした。親子ともに将来に絶望し、藁をもすがる思いで、通わせられる学校はないのか…… 私たちは、そんな親子に寄り添い、あるいは支え、自信をもって社会に送り出していくために、かつて黒柳徹子さんが『窓際のトットちゃん』の中で描いたような、生徒一人一人に寄り添っていける居場所、学校を立ち上げたのです。 開校以来、私たちは、学校は「社会へ出るための予行演習の場」である、と位置付けてきました。
さまざまな人と出会い、お互い理解しあい、そして、失敗を恐れずに、自分のやりたいことを積極的に挑戦してほしい。その過程で、自分自身をあるがままに受け入れ、自分の意思を確認し、その能力をどのようにして社会で発揮できるのか、役に立てるのか、考え、話し合い、実践していってほしいと考えてきました。
そのために、教職員は、「お節介のプロ」として生徒に寄り添い、生徒の良き伴走者としてお役に立てられるように、努めてきました。時には厳しく、時には優しく、一緒に泣いたり笑ったりしながら、一人の人間として、生徒に向き合っていくことを大切にしてきました。
さまざまな試行錯誤を重ねながら教育実践を積み重ね、ついに、平成17(2005)年、当時の構造改革特区制度を利用して、伊勢志摩国立公園の域内にある、風光明媚な三重県志摩市において、株式会社立代々木高等学校を開校させることができました。豊かな自然などを教育資源としてさらに実践を積み重ね、令和3(2021)年4月、志摩市磯部町夏草の地において、学校法人立代々木高等学校として、新たな再スタートを切ることとなりました。学校法人となってからも、代々木高校の教職員は、なおいっそう研鑽と努力を積み重ね、生徒、保護者、そして社会に貢献できるように、さらに質の良い教育活動を目指してまいります。 歴史を紐解いてみれば、常に人類は先の見えない時代を歩いてきました。これからもそのありようは変わらないでしょう。
東京の代々木で小さなオルタナティブスクールとして開校して以来、私たちは「多様性を認め合うこと」そして「自分の意思と力で歩いていくこと」を大切にしてきました。これらの教育方針は、これからの時代においても、次世代、次々世代においても、生徒一人一人が幸福な人生を歩み、自分の能力を遺憾なく発揮し、社会の発展に貢献していくにあたって、重要な資質を養うものであると確信しています。
学校法人 代々木学園 理事長 一色 真司